UTOPIA


 のいちごがみのって、しろくてけなみのよいかわいいうさぎがそれをたべていました。まるで地球の呼吸のようなあたたかい風がながれていました。
 ひとりの坊やがながぐつをはいて、さくをこえるのにほねをおりおり、やってきました。それにきづいて、みみずたちは周辺の地中にあつまります。坊やはじゃぐちをすこしひねってから、じょうろにみずをためはじめます。それからみずをまきながらこう言うのですが、どうにも不実そうです。
「ぼくは小さなみそさざいになりたかったのに、どうしてさ?」
「インコのようにのどをふるわせてみても いっこうきれいなおとはでないし
 うわくちばしを舌でなぞる遊びも、ぼくにはできない
 こんなのって、つまらないや」
 ことしのはるはとてもながく、雨もちょうどよくふるので野菜は肥料をやるだけでよく育ちました。先月うえたトマトの種は芽ぶき始めています。
「あなたはね、小さな鳥になりたいとこのしゅんかん思うために
 今までもこれからもずっと心臓がけつえきをいそがしくおくっているのよ」
 みつばちははちみつをあつめるのをやめ、じぶんのいえをこわしはじめています。5ミリしかない小さな足を2本つかってすこしずちすこしずつこわしていきます。そのしたではへびが皮を脱ぎすてたまま動かなくなりました。
 せかいじゅうの、ありとあらゆるいかなる事象にも、終末、あるいは、結末があるのです。この、できそこないの物語にも。さらには、このせかいじたいにさえも。
 さあ、家のむこうへと続くながいみちから、ひとりおんなの人があるいてくるのがみえます。いくつものgood-byeをつみかさねて。すべてのこたえを、しっているのでしょうか。

「そんなのわかんない」

そう言って坊やは、やわらかな畑の土からにんじんをぬいたのです。


20090929 大好きなしんゆうをおもいながら