部屋 『きみは眼でものを見ないんだね』 透きとおるような光のなかで、ターコイズブルーはむじゃきにほおづえをついている。あそんでいる手をなにげ無しに、ガラスの花瓶にさしてあるドライフラワーにやさしくふれる。当然のことながら湛然としてはおらず、それを把握したうえでも彼は淡然としている。 『つまるところ、しんだようにねむっているのか、ねむるようにしんでいるのか、そんなものどちらでもかまわないんだ、ぼくには。』 一寸目を上げて、意味ありげに配せる。まぶしさに細めたつもりが、菩薩さながらほほ笑んだようであった。 角のとまり木にケツァールがとまっていて不思議なまなざしを向けている。羽根のいちまいいちまいに、もれなく光が差し込んでいる。ひとみはまるで、ダイアモンドにも劣らない、猫目石にもにていて。そのせいでターコイズブルーは自分のたからものが欲しくなった。 『たとえばさ、電子、ってあるじゃない。まるでそれみたいだ、ね。』 大袈裟な身振りをしながら、泣きそうになるのをいっしょうけんめいこらえている。下唇がへんな風にまがっているのに気付く。肉体を媒介する血液はどしん、どしんと異様に拍出されている。 これ以上の耐久はむりで眠たいふりをして伏せる、おもったより冷たい温度には心地よささえ感じた。あるいは此の外には、何もない、かのようだ。 『ねえ、ぼくが縷言をいっているとおもう?』 そのときじっと星をながめていたピコは迷わずぼくの望んだ行動をとってくれた。だからぼくは、おまえがいてくれてよかった、そう思えたのだ。 2009/05/05 (Tue) 1:13 |